研究会レポート2018年1月開催:仕事と介護の両立
~ダブルケアの現状と課題~
RESEARCH SOCIETY REPORT

今回の研究会では、一般社団法人ダブルケアサポート代表理事の東恵子氏をお迎えしてダブルケアの現状を知ると同時に、企業におけるダブルケア支援のあり方をディスカッションを通して考えました。

タイムスケジュール
  1. 【講義1】ダブルケアの定義と実態について
  2. 【講義2】企業はどのような支援を考えればよいのか
  3. 【ディスカッション】
    企業が「ケアする人がケアされる場」となるために

第一部では「ダブルケア」の定義、現在このテーマがクローズアップされてきている背景について、東氏から講演をいただきました。狭義では「育児と介護の同時進行」を指しますが、広義には「家族や親族等、親密な関係における複数のケア関係や、そこにある複合的課題」とされます。療養中の夫のケアや、障害をもつ兄弟のケア等も含めて考えると、ダブルケア(さらにトリプルケア等も)の広がりを理解することができます。また、「なぜ今ダブルケアが問題になっているのか」という点については、晩婚化と晩産化という人口学的な要因に加えて長時間労働等の労働市場の構造要因や女性就業率の上昇や地域ネットワークの変容(地域コミュニティの希薄化)が大きいとの説明がありました。

ダブルケア研究プロジェクト*の調査研究から、現在ダブルケアに直面している人の約半数が仕事をしている(正規、パート、派遣、自営含む)こと、平均年齢は本人41.13歳、第一子は7.74歳、ダブルケアラ―の支援者として夫、友人、ケアマネジャーがいるが、誰も助けてくれなかったとの回答も12.4%あることなど、ダブルケアの具体像の紹介があり、参加者はそれらの話に引き込まれながら改めて「ダブルケアと仕事との両立の困難性」を確認しました。

第二部は「企業におけるダブルケア支援」をテーマに、40名弱の参加者が7つのグループに分かれディスカッションとそれに対する東氏のコメント、アドバイスを中心に進行。

「企業が支援に取り組む場合『育児との両立』『介護との両立』とそれぞれの切り口で別の動きになることが多いので、ダブルという視点、障害や療養とも重なっている可能性があることを付け加えていくようにしたい」「支援制度はあるが周知が必要」「社員から自己申告してもらうための工夫が重要」などの意見が共有されました。最後に東氏から「自分でダブルケアだと自覚していない人も多い。周囲が気づくことの重要性」の指摘があり、また「働く人も地域につながることが大切であり、社員の地域活動を支援することなども企業にぜひ検討してほしい」との問題提起をいただいて、終了となりました。

※日本学術振興会 科学研究費(基盤B)「東アジアにおける介護と育児のダブルケア負担に関するケアレジーム比較分析」(2012~14)、横浜国立大学経済学部アジア経済社会研究センターの研究プロジェクト

東 恵子氏

一般社団法人 ダブルケアサポート代表理事
NPO法人 シャーロックホームズ 理事長

参加された方のご感想

  • 考えさせられることが多かった自分もダブルケアになる可能性がある。
  • 「ダブルケア」が単に実子の育児+実親の介護ということだけでなく、様々なケースがあることが分かりました。気づいていないけれど、ダブルケアに当てはまる人はもっと沢山いるかもしれないということに意識を向けて見たいと思います。
  • ダブルが介護×育児と思っていたが、様々な事情×2ということがわかった。確実に社内にこういう人がいるのだが、まずその実態の把握が難しい。何でもフランクに話し合え、相談し合える職場作りはますます必要だと思った。
  • データ含め、具体的に理解できました。介護・育児など、横断的に捉える必要性を感じました。
  • 介護と仕事の両立から、ダブルケアの両立に向けて、取り組むべきサポートや体制を考えるきっかけとなった。
  • ダブルケアという事象をはじめて知りました。これまで社内でダブルケア理由で退職されていた方もいたかもしれないと感じました。
  • 孤立しやすい社員が安心して相談できる仕組みが必要と思いました。