研究会レポート2017年7月開催:仕事と介護の両立支援と働き方改革
~育児・介護休業法改正の背景から考える~
RESEARCH SOCIETY REPORT

今回は、独立行政法人労働政策研究・研修機構 主任研究員池田 心豪氏をお迎えして、今年1月に改正された「育児・介護休業法改正の背景」「有効な仕事と介護の両立支援策」のテーマで講演していただきました。またその後、「従業員が介護に直面した際にも会社として慌てないためにどんな取り組みをしているか」「実際に介護に直面したら困る仕事(職務)はどんなものか」をテーマにグループでディスカッションを行いました。

タイムスケジュール
  1. 【講演】育児介護休業法改正の背景
  2. 【講演】有効な仕事と介護の両立支援策の検討
  3. 【ディスカッション】
    「仕事と介護の両立支援」と「働き方改革」

今回の介護休業法の改正の意図は、個別性が高く、かつ短くない介護に対応するために、いかに実用的なものにできるかということにあります。従業員が介護をしていても「いかになるべく通常通り」に柔軟に勤務できるか、ということが大事なポイントになってくる旨が池田氏から強調されました。さまざまなデータ、ヒアリング内容等の具体的な研究成果を踏まえた話は大変わかりやすく、説得力のある内容でした。

しかし、実際のところ、従業員が介護休業の制度を知らなかったり、上長に相談しにくかったりの理由で「隠れ介護」をしているケースや、職種的に介護休業が使用しにくいケースもあるなど、まだまだ課題は多くありそうだと多くの参加者の方からの意見があがりました。

会の後半ではグループに分かれてディスカッション。すでに各社で取り組みを始めている働き方改革や仕事と介護の両立支援策の進捗状況やそこから見えてくる課題について活発な意見交換、情報交換が行われました。一部の方からは「もっとディスカッションしたい」というお声も頂戴しました。

まとめとして池田氏からは、いざ介護となった時に、従業員も会社も慌てずに仕事と介護を両立していくには、

  • 今までの「普段やルーティーン」を崩さないよう、物理的・精神的に準備を進めていくこと
  • 従業員が会社を信頼して介護のことを話せる様に、日頃からコミュニケーションを取ること
  • 介護は他人事ではなく、「お互いさま精神」の意識の風土をもつようにすること

これら3つの準備が「要」になる、と大変貴重なポイントを説明していただきました。

池田 心豪氏

池田 心豪氏

独立行政法人労働政策研究・研修機構 主任研究員

主な論文に「介護疲労と休暇取得」(『日本労働研究雑誌』643号、2014年)、「在宅介護の長期化と介護離職―労働時間管理と健康管理の視点から―」(『季刊労働法』253号、2016年)など。
厚生労働省「今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会」「『転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)』策定に向けた研究会」委員。 ほかに「両立支援ベストプラクティス普及事業」「仕事と介護の両立支援事業」厚生労働省委託事業の委員を数多く務める。

総括

Work&Care研究会では、2015年度の1回目に続き再度ご登壇いただいた池田氏の講演でしたが、参加者の事後アンケートでは100%の方が「満足・まあ満足」との回答でした。

参加された方のご感想

  • 今後進めていく方向性がわかりやすく示されていた。社内で伝えていく場合のポイントも池田先生のお話からよくわかった。
  • 介護休業法の改正背景やプロセスを伺えたことは、貴重な経験でした。
  • どこの企業も工場とか対応しづらいと感じているとわかった。
  • 先生のお話は「働き方改革」と「介護」をつなげて、ヒヤリハットリスクがあるなど、大変わかりやすく興味深い内容でよかった。
  • 各社、異業種の取り組みを聞く機会が少ないので、とても有益だった。
  • 各社いろいろ悩みはあるということはわかりましたが、共有するには少々時間が少なかったです。