2017年に創業100周年を迎えた、日本を代表する乳業メーカー「森永乳業株式会社」。
「仕事と育児の両立支援」などから取り組みをはじめ、2017年からは本格的に「働き方改革」「仕事と介護の両立支援」にも着手。従業員の「介護離職」のリスクに備える取り組みをリードするコーポレート本部人財部労政企画グループの飯田晃彦様にお話をうかがいました。
弊社では、育休を取得する従業員が増えてきた2005~2006年頃より「出産・育児」関連の制度の整備や社内への情報提供などを積極的に行い、その成果として育児による退職者は減少しました。2017年には社内に「ダイバーシティ推進委員会」を立ち上げ、「働き方改革」や「介護」にも全社的なテーマとして取り組むようになりました。
「働き方改革」としては、以前から時差出勤やノー残業デーを取り入れており、2017年には在宅勤務制度を導入しました。2019年からは、一部の事業所で導入していたフレックスタイム制の対象事業所を、全社に拡大しました。
特にフレックスタイム制は、管理部門や販売部門だけでなく、工場の事務部門などでも活用されています。
忙しい時期とそうでない時期に差がある人はフレックスタイム制をうまく活用し、締め日の前は長く働くが少し余裕のある時期は早く帰るというメリハリのある働き方ができるようになり、生産性向上につながっています。 一方、「介護」については、当初、「世の中的にも注目が高まっているし、そろそろ取り組まなければ・・・」という漠然とした課題感があるだけの状態でした。そのような中、直属の上司が遠距離介護をすることになり、個人的にそれが、「介護」に対する課題認識を変える大きなきっかけになりました。
仕事上ではまったく支障がないように見えていた上司でしたが、お父様が亡くなられた後、「遠距離介護を行っていた時期は、仕事のパフォーマンスが多少なりとも落ちていたと思う」と、介護していた当時を振り返っていたのを聞き、介護に直面した場合、業務に支障をきたす人が多いのではないか、と考えるようになりました。「介護」がいかに当事者にとって大変な問題であるか、と同時に、会社として早急に取り組むべき重要な課題であると実感しました。
以前より、介護休業など介護関連の制度は整備してきていましたが、各事業所の労務担当者から「介護休業はどうやって取得すればいいのか」「介護休暇とはどういう制度なのか」という、基本的な問い合わせがあり、社内での周知が十分ではないことを改めて認識しました。
弊社の従業員は日本全国へ転勤の可能性があり、遠距離介護で困る従業員が増えるリスクも懸念されます。そこで、2018年より家族の介護のために帰省した場合にかかる交通費の一部を会社が補助する制度を設け、介護帰省についてのサポートを開始しました。利用するにあたっては条件や、補助する金額の上限はありますが、交通費実費の3割相当額を会社が負担しています。介護のための帰省は1回では済まないので経済的な支援は重要であると考えていますが、制度を十分周知できていないこともあり、実際に利用しているのは10名未満に留まっています。
ここが課題でもあったのですが、社内の介護に関する制度について周知するタイミングが難しく、いざ利用する段になるまでは、本人も労務担当者も制度を詳しく知る機会がありませんでした。今は半年ごとにセミナーを開催しているので、その募集の際に、改めて会社の制度を案内することもでき、「会社として、仕事と介護の両立を支援している」というメッセージの発信にもつなげることができています。
「仕事と介護の両立支援」の取り組みを検討するにあたっては、「社内の実態がわからない」という壁にもぶつかりました。ベネッセシニアサポートの担当者から、「セミナーを1回実施してみて、参加者の声や要望から次の施策を考えるのがよいのでは」というアドバイスもあり、55歳以上の従業員向けの社内セミナーの1テーマとして「仕事と介護の両立セミナー」を実施したところ、参加者からは前向きなコメントが多く寄せられました。
「知らなかったから聞けてよかった」という感想の中でも、「0が1になった」というコメントはとても印象的でした。たしかに、知識が「0」のままだと、何をすればいいのか分かりませんが、「1」だけでもあれば、誰に聞けばいいのかが分かり、次に何をすればいいのかが分かる、というように、次の手がかりへとつながっていきます。介護は一人ひとり千差万別だからこそ、このようなセミナーによって「全員が知っておく」ことが重要であると改めて感じました。
ベネッセシニアサポートのサービスを採用した一番の理由は、「どう仕事を続けていくか」にフォーカスしているところです。「介護のために会社を辞めてはいけない」というメッセージが、会社の思いと通じるところがありました。それでも、最初のセミナー開催の準備を進めるうちに「人は集まるのか」「どんな反応があるか」という不安にも駆られました。実際に開催してみると、「仕事と介護の両立セミナー」は回を重ねるごとに参加者数やその反応が大きくなりました。
2018年から本格的に導入した「WEB会議」システムを活用したことも一因です。2019年のセミナー開催時に全国の拠点に案内を出したところ、ほぼ全ての36拠点から参加がありました。各会場の規模は様々ですが、全国にいる従業員のうち約440名がWEB会議を通じてセミナーを受講し、一人でも多くの従業員に情報を届けることができて、開催してよかったと思いました。
介護で困っている人や、周りの人になかなか言えずに悩んでいる人もいます。従業員が介護に直面した際に、介護をしながらいかに無理なく仕事を続けてもらうか。そのためには、まずは情報提供をしていくことが必要だと感じています。
育児用ミルクを扱っていることから育児関連の人事制度づくりにも力を入れてきました。また、弊社では高齢者向けの介護食も提供しています。介護食などの商品を通じて、介護施設でお客様に接している従業員から「仕事に活かしたいからセミナーを聞きたい」という要望がありました。「仕事と介護の両立支援」に取り組むことは、単に従業員のライフを支援するというだけでなく、 “お客様の一生に寄り添える”商品を強みとしている企業だからこそ、仕事にもつながっていく部分がある。育児から介護まで、従業員一人ひとりが、様々なライフスタイルと仕事の両立を実現できるように、これからも支援を続けていきたいと考えています。
取材日:2019年10月25日
仕事と介護の両立セミナー/個別相談会(期間限定)
仕事と介護の両立セミナー基礎編の開催とセットで、1か月間の期間限定で、電話・メール個別相談会を実施。介護の相談窓口を常設するかどうか迷われている、社内に個別相談窓口のニーズがあるかどうか把握したい企業様におすすめのサービスです。
サービスについて詳しく見る