「多様な人財がCROSSしながら能力を最大限発揮し、成長し続ける会社」というD&I*ビジョンを掲げ推進するNTTテクノクロス株式会社。社員によるコミュニティ「介護ラボ」を立ち上げ、全社に向けた介護と仕事の両立支援の取り組みが加速度を増しています。
*D&I:ダイバーシティ&インクルージョン
笛田さん 介護と仕事の両立支援の取り組みが本格的にスタートしたのは、2020年の4月にD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)推進室が人事部に発足してからです。それ以前も単発で介護関連のセミナーを開催し、多くの社員が参加していたため実際に困っている人がいることは把握していましたが、継続的な取組みにまでは至っていませんでした。
しかし、当時の社員の平均年齢が45歳くらいだったため、親の年齢を考えると半数以上は介護の予備軍ではないかと想定し、今後会社が長期的に成長し続けるためには、今のうちに手を打たなければいけないという話になり、本格的に取り組みを始めることになりました。
ただ、取組みを開始するにも、介護に関しては私たちも実態がよく分かっていなかったため、実際に介護で困っている社員に話を聞くのが一番ということで、「介護ラボ」というコミュニティを立ち上げ、介護経験者の声を聞きながら、実態を把握し、課題を明確にしていく活動を始めました。
会社には元々、「First Penguin Lab®」という組織を超えた社員が集まって、会社をより良くしていくために自主的にチャレンジするコミュニティがありましたが、その中のメンバーを中心に介護に関心のあるメンバーを募ったところ、8名のメンバーが集まり「介護ラボ」を発足しました。そのうち5名は介護の経験者、私を含め残りの3名は将来のために勉強をしたいというメンバーでした。
奥さん 私は介護経験者で、短い期間ではあったものの非常に大変な経験だったので、周りの人にも知ってもらって困ったときには助け合っていかなければという思いで参加しました。これまではみんな介護で苦労していても話す場がなかったんですね。笛田さんが、「介護ラボ」として2週間に一度の定例会を設け、オンラインで話ができる場を運営してくださり、介護そのものの話から、お金の話、亡くなってからの話まで、色々な話題に発展していきました。それらを基に、どのように情報を発信して、介護について社員が学べる施策の実現につなげていくかを考えました。
笛田さん 参加者のみなさんは色々な経験を持っていたり、社内の現場で課題を感じていたりして、施策を進める立場としては、本当に貴重な意見が得られる場でした。参加できる方だけでいいですよと話していましたが、毎回ほとんどのメンバーが参加して、積極的に意見を出してくれました。同じ会社にいる者同士だから話がしやすいこともあるでしょうし、介護中のメンバーからはここで話をすることで救われるといった声もありました。当事者にとっては心の支えとなり、聞く側には勉強になるということで、会社からもこの活動は必要だと認められるようになりました。
「介護ラボ」を立ち上げたのが2020年の12月ですが、ベネッセシニアサポートさんと打ち合わせを始めたのもその頃ですね。「介護で困っている社員の助けになりたい」という介護ラボのメンバーの気持ちと、会社としても本格的に介護と仕事との両立支援に取り組むんだという思いを、ベネッセさんに共有させていただきました。翌年2月に介護セミナーを開催いただき、セミナーの中で、会社の制度や取り組みについて紹介いただきました。そこからのスピード感はすごかったですね。特に介護セミナーをきっかけにすべてが走り出したという感じです。セミナーの中で「介護ラボ」の活動を紹介したことで、多くの社員の方に介護ラボの存在を知っていただくことができました。また、同時に、社内のイントラで介護に関するeラーニングコンテンツを掲載、介護コラムの連載もスタートさせました。初回はセミナー報告、2回目からは定期的に介護の基本情報を配信し、ベネッセさんの配信コンテンツも活用させていただきました。その成果もあって、全社的にも認知度をあげることができたと思います。
笛田さん 介護セミナーは録画の配信も行い270名の社員が参加してくれました。アンケートでは、97%が「役に立った」と回答してくれたように、大変好評でした。ニックネームを使ってのチャットはとても盛り上がりましたし、クイズを出してリアルタイムで答えたり、アンケートの集計結果がすぐ見られたりと、コロナ禍で閉塞感の漂う中だったので、双方向のセミナーを提案してもらえたのが良かったと思います。
初回は社員を対象に行いましたが、二年目からは家族参加型に。オンラインでパートナーや親御さんと一緒に聞いたという人も多くて、家族で将来の対策や備えについて考える機会を作ることができたと思います。
アンケートの項目もベネッセさんと相談しながら考えて、私たちの希望が反映されたものになりました。社員がどのようなところに不安を抱えているのかニーズを把握することができたので、次の活動につながりました。アンケートでは、遠距離介護で悩んでいる人が多いことや、お金の話に関心が高いことが分かりました。具体的な事例や体験談を聞きたいという声も多く、そこから介護ラボのメンバーによる「介護事例共有会」の開催へと発展していきました。
佐々木さん 私は母の介護を経験していますが、母は既に亡くなっています。今後自分や配偶者の介護が必要になる時が来るかもしれないと思い、介護セミナーに参加しました。そのアンケートで「介護経験者なので体験談をお話できます」と書いたら、声を掛けてもらってそのまま介護ラボのメンバーになりました。
笛田さん 佐々木さんには介護事例共有会で講演をしてもらいました。非常に生々しい話も含めてリアルな体験談を聞いて、涙する人も多かったですね。
佐々木さん 介護は育児と違って、人に話すのが恥ずかしいとか、口に出してはいけないのではないかと思っている人も多いと思います。「周りに介護経験者はたくさんいるよ」ということが少しでも浸透すれば、自分に何かあった時は気軽に相談できるということがわかり、気持ちが楽になると思うんですね。「介護ラボ」が、駆け込み寺のような存在になっていけたらいいなと思っています。
奥さん 会社は色々制度を作ってくれますが、ちゃんと使えることが重要ですよね。制度が「仏作って魂入れず」にならないためのサポート役に、「介護ラボ」がなれればという気持ちでやっています。
佐々木さん 私が介護中だった時にも、この介護ラボがあったらどんなに良かったかと思います。アンケートで「介護をいかに楽しむか」と書いていた人がいて、目から鱗でした。私は楽しむ余裕なんてありませんでした。「少しでも介護が楽しくなるように家族で話し合っていた」という話には、新しい気づきをもらった思いでした。
これもアンケートにあった声ですが、「介護は誰にでも訪れるもので、役職や年齢、性別は関係ない。介護においてはみな平等な立場なんだ」と書かれていて、本当にその通りだと思いました。会社全体でお互い支え合っていかなければならないものだと実感しましたね。
笛田さん 「First Penguin Lab®」では、会社を良くするためのチャレンジに対して贈られるアワードがあり、コミュニティごとに幹部や社員向けに発表を行うのですが、「介護ラボ」は3年連続で3位以内に入り、大賞である「ファーストペンギン賞」を受賞しています。継続することが大事。こうして会社も活動を応援してくれるし、集まってくれたメンバーに恵まれたと感謝しています。
「介護ラボ」では、当事者の困っていることにしっかり目を向けて、施策につなげていくことができましたし、社員同士がオープンマインドで相談し、支え合う風土ができつつあると感じています。ダイバーシティ全般で考えると、介護や育児以外にも様々なテーマがありますので、今後は他のテーマにも応用して、更なるダイバーシティ&インクルージョンの推進を目指していきたいと思っています。
取材日:2023年8月3日
仕事と介護の両立Eラーニング/仕事と介護の両立セミナー/定期配信コンテンツ
仕事と介護の両立について困っている従業員が存在し、平均年齢もあがってきたことから、
様々なツールを活用して介護情報をわかりやすく従業員に発信しています。
セミナーには従業員とそのご家族にもご参加いただき、一緒に両立支援を考えるきっかけにしていただきました。
また、好きな時間に学べる定期配信コンテンツもご用意し発信しています。
介護ラボと連動しながら、多くの仕事と介護の両立情報を従業員に届けて、風土醸成の一環を担っています。