METHOD

育児支援との違いから考える——
仕事と介護の両立支援が難しい理由

2026年7月8日

育児と介護の両立支援の違いとは?
少子高齢化の進展に伴い、両立支援は企業にとって重要なテーマとなっています。これまで多くの企業が注力してきたのは育児支援ですが、近年は介護との両立に直面する従業員も増えています。
しかし現場では、「育児支援で培ったノウハウをそのまま介護にも展開できるのではないか」と捉えられているケースも少なくありません。結論から言えば、その考え方では不十分です。介護は育児とは構造的に異なり、より複雑で対応が難しいテーマです。本記事ではその違いを整理し、人事が取るべき視点を考えます。

01.育児と介護の両立支援の違い①:発生タイミングの「予測可能性」

育児は妊娠期から出産まで一定の期間があり、本人も企業も準備が可能です。制度案内や面談など、計画的な支援が機能しやすい領域と言えます。

一方で介護は、ある日突然始まるケースも多く、事前に備えることが難しいのが特徴です。従業員が何の準備もないまま直面するため、企業としても即時対応が求められます。この「予測できなさ」が、本人の両立課題へと発展し、企業側の支援の難度も大きく引き上げています。

02.育児と介護の両立支援の違い②:当事者意識のギャップ

育児の場合、当事者は自覚を持ち、情報収集や制度利用に向けて主体的に動く傾向があります。

しかし介護では、「まだ大丈夫」「自分には関係ない」と考える層が多く、予備軍であっても自覚がありません。そのため、制度が存在しても認知されず、活用されないという問題が起こります。結果として、従業員は課題を抱えて初めて支援を探すことになり、対応が後手に回りがちです。

03.育児と介護の両立支援の違い③:社内での“話しづらさ”

育児は比較的オープンに話題にしやすく、制度利用に対する理解も進んでいます。

一方、介護は家族の健康状態や家庭事情といったセンシティブなテーマを含みます。そのため、社内で相談することに心理的な抵抗が生まれやすく、「言い出せない」「一人で抱え込む」といった状況が起こりがちです。この見えにくさが、風土づくりの難しさや、離職やパフォーマンス低下のリスクにつながります。

04.育児と介護の両立支援の違い④:制度利用の複雑さ

育児制度は社会的な認知度が高く、利用方法もある程度標準化されています。企業側も「このタイミングでこの制度を案内する」というオペレーションを組みやすい領域です。

一方、介護制度は認知度が低く、利用シーンも多様です。介護の状況、家族構成、地域サービスによって最適な選択が異なるため、画一的な使い方ができません。制度があるだけでは機能せず、「どう使うか」まで含めた支援が求められます。

05.育児と介護の両立支援の違い⑤:対象者の見えにくさ

育児はライフイベントとして把握しやすく、対象者も比較的明確です。そのため、情報提供や施策のターゲティングがしやすいという特徴があります。

これに対し介護は、潜在層が非常に多く、「誰がいつ当事者になるか」が見えません。その結果、必要な人に必要な情報が届かないという構造的課題があります。ここでも、育児と同じアプローチでは機能しないことが分かります。

06.まとめ:育児モデルの延長では対応できない

ここまで見てきた通り、育児は比較的「事前準備が可能で、標準化された支援が機能しやすい」領域です。一方、介護は「予測困難で、個別性が高く、相談しにくい」領域です。

つまり、育児支援でうまくいった施策をそのまま横展開するだけでは、介護の課題には対応できません。

07.人事に求められる3つの視点

では、企業はどのように向き合うべきなのでしょうか。2025年に施行された育児・介護休業法の改正の背景でもある、以下の3つの重要ポイントを押さえることが不可欠です。

つまり、育児支援でうまくいった施策をそのまま横展開するだけでは、介護の課題には対応できません。

  • 早期の意識啓発:当事者になる前から情報に触れる機会をつくる
    例:介護セミナーの実施やeラーニング、40代以上に向けた情報提供など
  • 相談しやすい環境づくり:センシティブでも安心して話せる仕組みを整える
    例:人事・外部窓口など複数の相談先を用意し、匿名相談も可能にする
  • 個別対応力の強化:一人ひとりに応じた支援を柔軟に提供する
    例:勤務時間の調整やリモートワーク、休暇の組み合わせ、介護サービスの紹介や専門家への連携など、状況に応じて支援内容をカスタマイズする

これらは、あらかじめ決まったパターンに当てはめる「標準化」ではなく、個々の事情に応じて最適な支援を組み合わせていく「柔軟性」を重視した取り組みです。介護は家庭ごとに状況が大きく異なるため、「一律の制度」だけでは支えきれないことを前提に設計する必要があります。

08.おわりに:いまこそ“介護支援”を再設計する

介護は、育児以上に見えにくく、複雑で、長期化しやすい課題です。それにもかかわらず、「育児と同じでよい」と考えてしまうと、従業員の離職や負担増加を招きかねません。

これからの人事に求められるのは、介護を「育児の延長」ではなく、独立した重要テーマとして捉えることです。そして、予測不能で個別性の高い課題に対応できる体制を整えることです。

介護支援は、いま見直すべき経営課題の一つです。介護施策に対しては、自社だけで抱え込まず、外部の専門サービスを活用するという選択肢も有効です。課題やお悩みがあれば、ぜひお気軽に一度ご相談ください。

介護両立支援プログラムはこちら