株式会社ニッスイは、「人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー」を目指し、創業以来110年以上に渡り食を支えてきた総合食品メーカー。国内外のオフィスから研究室、工場まで様々な職場で、多様な専門性を持つ社員が活躍しています。そうした環境で働く社員を支える、同社の「仕事と介護の両立支援」の取り組みについて、人事部労務健康企画課の八重樫尚人様にお話を伺いました。
01.高まる介護の需要やリスクを見据えて
2015年に人事制度を見直す機会があり、福利厚生についても再構築しようという議論が交わされました。当時の社員の年齢構成を見ると、40代後半から50代前半の割合が非常に高く、今後、“介護”に対する需要やリスクが高まることは明らかでした。介護を「誰にでも発生しうるライフイベント」として捉え直し、介護に加え、育児や健康も合わせた3本の柱に、より力を入れる方向に舵を切ったのです。
ただ、育児や健康に関しては事案が挙がって来るのですが、介護は相談などがあまりなく、「影が薄い」状態が続きました。制度があっても知られていないし、利用されていないという課題が浮かび上がったのです。
当初はその解決策として、ストレートに介護手当の支給も検討しましたが、「対象者が見えないなかで有効ではないのでは」との議論になりました。そして、「目立たないからこそ、必要なときにすぐ利用できる支援をきめ細かく実施する必要がある」との方向性が出されたのです。併せてベースになる知識や情報の提供・共有に力を入れることになりました。
02.いざというとき頼れる窓口を設置
2016年から実施したのが、ベネッセシニアサポートさんによる、電話・メール相談サービスやセミナーの開催です。介護が始まったら、どんな窓口にどう連絡すればいいのか、どういう制度やサービスを利用できるのかなど、事前に知識を身につけておくことが大事です。ただ、介護の必要性が目の前に迫って来ないと、「今度でいいか」「忙しいから次回に」といった意識が働きがちであることも課題として見えてきました。
2018年からは、カフェテリアプラン※を導入し、育児・介護・健康に重点を置いたメニューを用意しました。介護に関する費用補助は、通常のポイントより比率を割り増しし、例えば1000ポイントで1,200円分ほど使えるように設定しています。
03.仕事と介護の両立はまず制度を知ることから
介護休暇は被介護者1人につき年間10日、2人以上の場合20日までと法定よりも手厚くしており、1時間単位で取得が可能です。介護休職は、対象家族1人につき通算1年6ヵ月までとし、分割しても取得できます。また短時間勤務制度、短時間フレックスタイム制度、テレワーク制度も整えています。ただ、制度があることを知らなかったり、「そうは言っても休めない」と思い込んだりしている人も社内にはいると思います。介護は「個人事情」という意識が根強く、会社に相談せず、自分で何とかしようという傾向がまだあると感じており、なんとか普及させたいと考えています。
弊社は多様な部門で成り立っていて、職種による働き方もそれぞれ異なります。工場・製造部門では、仕事の性質上、テレワークやフレックスといった柔軟な働き方が難しく、支援策には限界があります。選択肢が限られてしまい、情報提供やお金の給付という面での支援が中心にならざるを得ないため、不公平感が生じないよう、いい取り組みの事例があればぜひ参考にして採り入れたいです。
04.介護の問題はあらゆる従業員にとって自分ごと
今年は、ベネッセシニアサポートさんに講師となっていただき、管理者向けのセミナーを実施しています。2025年度の育児・介護休業法の改正をきっかけに、介護について会社がどういうスタンスで、何を求めているのか、改めて明確にしようというのが狙いです。個別性の高い介護問題について、対象者本人だけでなく、上司と職場の同僚一人一人が自分ごととして捉えられるような意識改革が図れたらと思います。
昨年、介護についてアンケートを取ったのですが、「5年以内に介護が必要になる可能性がある」という回答が多く寄せられました。10年前、40~50代のボリュームゾーンがそのまま上に上がってきた感じです。心配や不安を抱えている人が少なくないという印象を持ちました。
また、遠隔地に介護対象者を抱えている従業員が多いこともわかりました。介護のために実家を何度も往復すると費用がかかります。弊社では、単身赴任者の帰省旅費については補助していますので、介護帰省に対しても今後、更なる支援ができないかと考えています。支援策が充実すれば、まだ介護に直面していない場合でも安心感に繋がりますし、他の制度を知って必要な支援を積極的に利用するきっかけにもなると思います。
育児はゴールが見えますが、介護はいつまで続くかわかりません。現在、介護が必要な人は上の年齢層が多く、「自分で何とかしよう」と考えて、会社への相談にためらいがある世代だと思います。でも育児・介護休業法も改正されましたし、今はそういう時代ではありません。会社もできることをやろうとがんばっていますので、ぜひ相談してほしいです。
人事部としても、制度の適切な運用と、必要な人が堂々と手を挙げられる風土の醸成を図っていきたいと考えています。
※カフェテリアプラン:会社が設定している福利厚生メニューの中から、従業員が付与されたポイント内で利用したい福利厚生を選択して利用する制度。
取材日: