1853年創業の歴史に培われた技術を核に、持続可能な社会への貢献を掲げる株式会社IHI。多様な人財が力を発揮できる企業文化をつくるためDE&I推進の一環として「仕事と介護の両立支援」を進めています。取り組みの中心を担う人事部DE&Iグループの旭睦様、天田未咲様にお話を伺いました。
※DE&I:ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平・公正性)&インクルージョン(包摂性)
01.見えにくい介護の潜在的な不安に向けて
旭さん
2017年の育児・介護休業法改正に合わせて、社内でも育児や介護の支援を目的とした制度を大幅に見直すことにしました。その際、退職者の方にヒアリングをしたところ、介護を理由に離職した方が一定数いることが分かってきました。そこで、ベネッセシニアサポートさんの力を借りて仕事と介護の両立支援施策を拡充しました。
仕事と介護の両立支援は、社員のニーズを把握しきれない難しさがあります。しかし、両立セミナーを実施したところ、たくさんの従業員が受講してくれました。リピーターも多く、「今すぐ介護の情報が必要」という状況ではなくても、潜在的な不安を抱える従業員が多いのだということが見えてきました。
天田さん
当社では入社時の研修で、介護も含め福利厚生の社内制度を伝える機会を設けています。多くの場合、実際に介護が差し迫るのはずっと後ですので、十分に認知されていなかったり、制度があることは知っていても使い方が分かっていなかったりといった課題があります。
それでも、両立セミナーの案内が例年より少し遅れると、「今年はセミナーを開催しますか?」といったお問い合わせをいただくことがあります。関心を寄せてくれている従業員がいることを実感しています。
旭さん
介護に関する社内相談の窓口は以前から設けており、社内イントラネットにも載せていますが、あまり知られていないという現状があります。両立セミナーで相談窓口について触れていますが、それを聞いて「初めて知った」「相談してみた」という声もあり、会社の施策を知ってもらう良い機会になっていると思います。
また、ベネッセシニアサポートさんに作成いただいた冊子『介護ロードの歩き方』も、セミナーの中でお知らせしており、大変好評です。各拠点の人事担当者との雑談の中でも話が出て、「介護の悩みを抱える従業員に渡したところ、分かりやすくて助かったと喜ばれた」と聞きました。特に、まず何をしたらいいのか、動き方が分かりやすく書かれているのが良いと言われました。
02.全従業員が対象のオンラインセミナー
旭 睦さん
旭さん
2019年から「仕事と介護の両立セミナー」は全従業員を対象に、オンラインで実施しています。介護については、個人個人で抱える事情や必要となるタイミングも異なりますから、年代・性別に関係なく受けられるものでなければならないと思っています。
天田さん
誰もが受けられることが重要ですし、受けられなかった場合もアーカイブ配信しています。当初は、ご家族も一緒に受けられるようにという考えもあり業務時間外に実施していましたが、介護も働き方に直接関わるものであり誰もが聴くべきテーマであると考え、昨年度から業務時間内での開催に変更しました。それでも多くの申し込みがあり、関心の高さが伺えます。年齢別では40代、50代の方が多いですが、実際に介護を始めている方ではなく、何らかの形でいつか関わるだろう介護に漠然とした不安を抱えている方が大半を占めています。
また、当社では法定(年間10日)以上の、年間15日の介護休暇を設けているのですが、それでももっと増やしてほしいという要望が来ることもあります。本当に足りない場合もあるでしょうし、他の制度や働き方との組み合わせができていない可能性も考えられます。
旭さん
私も自身が介護に直面したらと考えてみると、15日で足りるのかどうかはよく分からないですね。育児と違って「一年経ったら子どもが一歳になる」のような明確さがありませんから。でも会社にはファミリーサポート在宅勤務制度など、人それぞれの事情に合わせて使える制度もあります。まずは両立セミナーなどをきっかけに知ってもらい、そして使ってもらうための理解浸透を進めていきたいと考えています。
03.両立支援を進める鍵は?
天田 未咲さん
天田さん
両立支援に関しては、まずは会社の制度を知ってもらうこと、正しく理解してもらうことが直近での注力事項と思っています。将来的には従業員が互いに介護について話せるようなネットワーク形成の支援もできればと思いつつ、今は足元を固めていく段階です。
旭さん
育児休業は育児をするための休業ですが、介護休業は介護の準備をするための休業ですよね。でも同じようなものと考えてしまうことが多いと感じます。使い方が違うことを正しく知ってもらうための情報発信が大事だという話はしています。また、介護というと、上司や周囲がどう対応したらいいか身構えてしまうかもしれないし、そう感じると本人も言い出しにくいと思います。
当社では、昨年度から全社的に「DE&Iを自分事にする」という重点施策を掲げてその人の持てる力を発揮できるよう取り組みを行っていますが、介護と仕事の両立支援もその一つと捉えています。
天田さん
介護と仕事の両立支援に当社が取り組んでいるのは、持続可能な社会の発展に向けて、多様な視点を事業に取り入れることが不可欠であり、それを支える多様な人財の活躍を促進するという、DE&Iを軸とした経営方針に基づくものです。両立支援に関してはEquityの概念がベースになります。時間や働き方に制約がある従業員が活躍できるような環境や土壌をつくり、力を発揮してもらうことを目的として各種施策を行っています。
旭さん
そもそも、会社の中でも部門ごとに働き方は異なります。例えば、工場においては在宅勤務という働き方が難しい状況にあります。だからこそ、まずは「時間や働き方に制約がある従業員が活躍できるような環境や土壌をつくろう」という意識の醸成から始める必要があると思います。IHIはさまざまな社会課題を解決するのが仕事です。そのIHIだからこそ、「社会課題を解決するためには、社会にいる多様な人が意見を言えるようにしないといけない」ということで、社内でも声を出しやすい土壌づくりに注力しているところです。
04.一人ひとりのキャリア実現を支えたい
天田さん
両立支援をサポートする部門にいるものとして、当社の従業員はもちろん、他の企業に勤められている方にも、勇気を出してご自身の状況を職場で、あるいは人事に話してほしいと思っています。やり方などは異なると思いますが、相談できる場や機会を各社とも設けているはずですので、話してもらえれば会社は受け止めますし、受け止める努力は続けますので、ぜひ頼ってほしいです。
また、他の企業様にも伝えさせていただくならば、制度を設けることで何かしら救われる人がいることは実感として確かにあります。介護に困難を抱える人が安心して働けるセーフティネットをそれぞれの会社に合った形で広げていただけたらと思っています。
旭さん
会社には様々な制度がありますから、従業員の皆さんには、自分が望むキャリア、生活を叶えるために、会社の制度を上手に使ってほしいですね。
※アンコンシャス・バイアス:無意識の思い込み
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