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介護離職者がいなくても、
今すぐ介護施策に着手すべき3つの理由

2026年3月31日

少子高齢化の進行により、仕事と介護の両立は多くの企業にとって避けて通れない経営課題となっています。介護は静かに始まり、本人も周囲も気づかないまま業務への影響が生じるケースが少なくありません。
制度整備だけでなく、早期発見と支援の仕組みづくりが重要です。本記事では、介護離職者がいなくても、企業が“今すぐ”介護施策に取り組むべき3つの理由を解説します。

理由1社員の約半数が“すでに介護予備軍”。介護は気づかぬうちに始まっている

企業内には、表面化していない“介護予備軍”が多数存在します。公的データでは、40〜50代の14人に1人がワーキングケアラーと推計されていますが、実際には「介護が始まっていることを自覚していない」社員が多く、統計では拾い切れていないのが現状です。弊社の実態把握調査を行った企業のケースだと、約半数が何らかの形で親の介護や支援に関わっているという企業も少なくありません。
例えば、遠方の親の通院付き添いや、定期的な帰省による生活サポートなど、本人が「これは介護だ」と思っていない段階から負担は始まっています。そして、この“無自覚の介護”こそが、最も早くパフォーマンス低下を招く要因です。「疲れが取れない」「有休が減り続ける」「突発的な休みが増える」といった兆候が徐々に積み重なり、気づけば業務に影響が及びます。
さらに、弊社の実態把握サービスを利用した多くの企業では向こう5年以内に約40%の従業員が介護に直面する可能性があるとのデータも見られます。
介護は“ある日突然訪れる”。それにもかかわらず、社員側の自覚が遅れるため、事後対応では間に合わないケースが圧倒的に多いのです。

理由2中核人材が一斉に介護期へ。企業のパフォーマンスへの影響が甚大

多くの日本企業で従業員の平均年齢が上昇し、「団塊ジュニア世代」がボリュームゾーンとなっています。この50代前後の層は、管理職として組織を支える“一番欠かせない人材”です。この層がちょうど今、親の介護に直面する時期を迎えています。
しかも近年は、晩婚化・晩産化の結果として「ダブルケア」(=子育てと親の介護が重なる状況)も増えています。部活や受験、思春期の子どもへのサポートが必要な時期と、親の介護が同時に始まる社員も少なくありません。
ダブルケアは精神的・肉体的な負担が極めて大きく、一人ひとりがキャリア継続に悩む深刻な状況に陥りやすい傾向があります。また、管理職が介護負担を抱えると、組織全体のマネジメント品質にも影響が出ます。
介護は「100人いれば100通り」と言われるほど個別性が高く、課題が複雑です。そのため、社員側の工夫や気力だけでは解決できないことが多く、企業が適切な支援環境を整える重要性は年々高まっています。
企業の中核を担う層が一斉にリスクを抱える——。だからこそ、介護離職が出ていなくても、すぐに施策を始める必要があるのです。

理由3法改正対応は「入口」。次に必要な支援フェーズに備えることが重要

2025年に改正育児・介護休業法が施行され、多くの企業が制度の周知や意向確認、40歳到達時の情報提供などの対応を進めています。ただし、法改正で求められる対応は“最低限のライン”であり、介護離職防止やパフォーマンス維持の観点から見ると、これはまだ「入口」に過ぎません。

実際の離職理由を見ると、

  • 制度自体はあるが“使いづらい雰囲気”
  • 相談先がわからない
  • 介護の知識不足で対応が遅れる

といった声が多く、「制度を整えただけでは十分ではない」ことが明確になっています。
これから企業に求められるのは以下の2点です。

①:制度が“使われる”ための環境づくり

制度を整えるだけでは、従業員の日常行動にはなかなか結びつきません。
制度が実際に活用されるためには、企業側の運用や職場文化の整備が必要です。

  • 管理職への教育(相談を受けた際の基本的な対応方針)
  • 制度利用者の事例紹介
  • 相談しやすい職場づくり
  • テレワークや柔軟勤務の現実的な運用

これらは短期間では浸透しないため、今から準備を始めることが極めて重要です。

②:介護の“早期発見”と“早期サポート”の仕組みづくり

介護が深刻化してから支援を始めても、離職や長期休職を防ぎきれないケースが多くあります。
そのため企業には、負担が大きくなる前に気づき・相談につながる仕組みが求められます。

介護リスクの“見える化”(アンケート・実態把握)

  • 「帰省頻度が増えた」
  • 「生活サポートが増えている」
  • 「親の健康状態に不安がある」

といった“本人がまだ介護だと自覚していない段階”にいる社員の状況を早めに把握することで、企業としてどの層にどのようなサポートが必要なのかを事前に見極めることができます。
こうしたリスクの見える化は、深刻化する前に支援を届けるための第一歩となります。

従業員が“必要になる前に”介護情報へ触れられる機会

eラーニング、動画、社内記事、セミナーなどを通じて、

  • 介護の進み方
  • 会社の制度や相談窓口
  • 初期にやるべきこと

を事前に理解しておくことが、早期相談につながります。
「困ってから調べる」のではなく、困る前から知っている状態をつくることが重要です。

まとめ:離職が出ていない“今こそ”が、最も良い着手ポイント

介護離職が起きていない企業ほど、準備が後手に回りやすい傾向があります。しかし、

  • 社員の約半数が実質的な介護予備軍
  • 中核人材が一斉に介護期へ
  • 法改正対応後は、次の支援フェーズを整える必要がある

こうした状況を踏まえると、企業が今すぐ取り組むべき理由は明確です。
介護は突然始まり、社員は“始まったことに気づくのが遅れる”という特性を持っています。
だからこそ、「始まる前に備える」ことが、従業員のキャリアと企業の持続的成長を守る最善策です。