世界に類をみないスピードで少子高齢化が進む日本の総人口は2008年をピークにすでに減少傾向にあり、現役世代(15~64歳の労働力人口)は、2015年の6,598万人から 2030年には約800万人減少し、5,800万人になると推計されています。(平成28年版 厚生労働白書) 「経済成長と労働参加が適切進まないケース」による)
一方、2025年には総人口の30%が65歳以上になると推計されており、今後、誰もが「介護される側」「介護する側」になる可能性があります。「介護する側」の現役で働く子ども世代の多くが、仕事と介護を両立するのが当たり前の世の中が、すぐ目の前まで迫ってきていることが言えます。
少子化に伴って、職場における要員構成にも、40~50代の割合が多くなるなどの変化が起こることが考えられます。40~50代の親世代は、介護を必要とする可能性が高くなる世代でもあります。
一方、職場では役員や管理職として企業の経営の中心となる世代でもあり、親の介護による離職やパフォーマンスの低下は、企業にとってもインパクトの大きい損失となります。
2018年7月13日に総務省が公表した、平成29年就業構造基本調査の結果によると、介護・看護を理由に離職した人は約9万9千人、前回調査の約10万人からほぼ横ばいで、介護離職が減っていないことが判明しました。
男女比でみると、男性の介護離職者数は増加、女性は減少。離職の割合は女性が約8割と、依然として高いのですが、介護をしている女性の有業率、つまり仕事と介護を両立する女性の割合は「70歳以上」を除く全ての年齢階級で上昇しているという結果も出ています。
核家族化や共働き世帯、未婚者の増加等により、介護の担い手が減少する中、もはや、女性が介護を担う時代は終わりを迎えます。親の介護と仕事の両立は、性別関係なく、誰にとっても無関心ではいられないテーマなのです。
介護について勤務先で相談する人は1割弱。9割の人は会社に伝えないという調査結果から、介護の課題は職場では顕在化しにくく、水面下で進行している可能性も高いと言えます。 一方で、すでに40~50代社員の1割以上が介護を担っており、近い将来に介護の問題が発生するであろうと答えるリスク層は約半数となります(ダイヤ高齢社会研究財団「超高齢社会における従業員の働き方と企業の対応に関する調査」(2013)より)。
介護の状況が切羽つまった段階で人事や上司に相談した時には、従業員の就労継続や就労状況にも大きな影響が出ることが考えられます。
介護にどのように備え、向き合っていくのかというテーマは、従業員一人ひとりの問題にとどまらず、介護離職や介護による労働生産性の低下など企業の経営にも直結する重要課題となってきます。
最もインパクトが大きいのが、役員や管理職=すなわち企業の経営を支えるキーマンの損失です。離職を別人物にて補充するとすれば、相応の採用コストが必要になります。重要ポジションをすぐに代替できるのかどうかという問題があります。
介護を担う従業員が増える中、水面下で介護の問題を抱えてた従業員が会社や職場に相談することなく、職場を離れていくことも十分考えられます。労働力人口減少の中で、思わぬ「人材不足」を招くことにもなりかねません。
「先の見通しが立たない」「介護休業を活用したが、まだ介護が終わらない・・」 育児と比較しても個別性が高く、複雑なのが介護です。しかも組織内で顕在化しにくいという特性があります。企業として何も手を打たなければ、直面した社員はストレスで心身共に疲弊し、集中力や生産性が低下、メンタル不調に陥ることも珍しくありません。突如休職が発生すれば、組織としての生産性の低下も避けられません。
従業員の仕事と介護の両立支援は、「人財」という
経営資源の損失を防止するためのリスクマネジメントであり、
将来への「投資」として、いますぐにでも取り組まなければならないものなのです。