合わせて約4,300名の従業員を抱える広告会社の株式会社博報堂と、総合メディア事業会社の株式会社博報堂DYメディアパートナーズ。社内では、早くから専門の介護相談窓口を設けるなど、介護離職防止のため、仕事と介護の両立支援に取り組んできました。現在、業界全体として「働き方改革」が求められている中、人事局労務部 部長の狗飼豊様、同マネジメントプラナーの伊藤幸子様にお話をうかがいました。
博報堂では、以前より介護支援として介護費用貸付、カフェテリアプランなどの制度を設け、他にも相談窓口を設置したり、セミナーを開催したりしてきました。法定ルールに則った介護休暇・休業制度以外に、年次有給休暇を積み立てて、介護や入院のために使用できる有休振替制度(上限40日)もあり、比較的早い段階から、介護に関する制度を導入してきました。一方で、「介護専門の相談窓口」が十分に周知されておらず、ほとんど利用されていないという課題もありました。
これまで「介護休業」の取得事例は少ないのですが、「介護や入院のために使用できる有休振替制度」を利用する人は多く、社内の自己申告制度でも、レベルは色々ですが介護を抱えている社員がとても多いこともわかりました。
また、昨年の秋頃、労務部に介護に関する相談が立て続けに来た時期がありました。お盆に帰省した際に、家族の現実に直面した、という時期だったのかもしれません。その方たちの話を聞いて「とても大変な状況なんだ」ということを痛感しましたし、中には若い社員が介護をしなければならなくなったという話もあり、驚いたのと同時に、介護支援施策を見直す必要があると感じました。育児関連の両立支援は整ってきていましたので、やはり次は「介護」に取り組むべきだと。
今までも介護支援施策や制度はありましたが、使われなければ意味がありません。社員にとって使いやすいものに進化させるべく、複数の両立支援サービスを総合的に依頼でき、色々な面で連携がとれる事業者を探しました。それがひいては従業員のためになると考えたからです。また、相談が増えた時期に、「介護施設をどのように探したらいいか」という声が目立ちましたが、私たちにはノウハウがなかったので、事業者を選ぶ際には、施設の相談ができることも重視しました。そして、検討した結果、ベネッセの「Work&Care」サービスを利用することにしました。
10月に開催した「仕事と介護の両立セミナー」は、家族と一緒に参加できるように、平日ではなく日曜日の開催にしました。参加者のアンケートには「休日開催で、家族が参加できたのがよかった」「お休みだったのでゆっくり聞くことができた」という意見が多く見られ、日曜開催にしてよかったと思いました。
介護は『家族事』なので、一人よりも家族と一緒に聞いてほしいと感じていました。また、自分だけがセミナーを受けて介護に詳しくなることで、家族の中で自分が“介護担当”にされてしまうことも考えられます。最初に家族を巻き込んでおくことも、両立のためには重要だと思います。
介護の問題は、自分に降りかかってきてはじめて、色々調べはじめたりしますが、実際に介護に向き合っている社員に話を聞くと、「いま介護に直面していない人にも知ってもらったほうがいい」と言います。それがとても印象的でした。多くの人が遅かれ早かれ直面する問題ですし、早めに知っておけば、後悔しなくて済むこともあります。
まだ「介護は他人事」「自分には関係ない」という雰囲気がありますが、「自分事」にしてもらうためにも、介護の施策をもっと社内に周知していくことが必要だと感じています。来期も、今回と同じ「基礎セミナー」を開催することになると思いますが、今年参加した人は同じ内容では参加してもらえないので、一歩踏み込んだ「応用編」を導入したり、経験者によるパネルディスカッションなども、今後検討していきたいと考えています。
また、子育て支援として取り組んでいる「MAMA UNIV.」の“介護バージョン”はできないかな、と。これは育休明けの職場復帰を応援するプロジェクトで、ママ社員同士のネットワークづくりや復職に向けた情報収集の場として活用されています。「育児」と「介護」では性質が異なるので難しさはあると思いますが、多様な「両立」のニーズに応えられるよう、柔軟に考えていきたいです。
この一年くらいで社内の「育児や介護」と「仕事」の「両立」に向けた施策が、かなりのスピード感をもって進んだという印象を持っています。担当者が、育児や介護と仕事を両立する社員の立場になって考え、取り組んでいることも大きいと思います。
日頃から「人が資産」「粒ぞろいより粒ちがい」といったメッセージを企業として発信していますが、「多様な生き方や様々な人生観を持つ人たちが生き生きと働けるように」というのは、⇒博報堂のフィロソフィーでもある「生活者発想」を基にしたものであり、諸先輩方が大切にしてきたことでもあると思います。
いま世の中で「働き方改革」が叫ばれていますが、来春の法改正によって労働時間についての規制が厳しくなります。そんな中、「どのように働くか」を考えることは、介護や育児との両立に限らず、全社的に大きな課題になると思います。
ワークスタイルを変えることには抵抗があるかもしれませんが、新しいコト(取り組み)に対して、否定的に捉えるのではなく、まずはやってみてほしい。どんなに制度や支援が整っても、それを活用するには周囲の理解が必要で、理解を得られない人はとても苦労しています。新しいコトや変化に対して、まずやってみようという姿勢が、両立支援を必要とする人たちへの理解にもつながっていき、多様な人たちが生き生きと働けるようになっていくのだと思います。
取材日:2018年11月13日
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「仕事と介護の両立ブック ~辞めないための7ヶ条~」を制作。博報堂の社内イントラネットに掲載し、社員がいつでも見られるようにしています。介護で仕事を辞めないために、おさえておくべきポイントを、イラストと組み合わせて解説した、親しみやすいハンドブックです。
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